ギターは音程の在る楽器ですから、他の楽器と演奏したりする場合には調律をしてやる必要があります。
それに加え、各弦を演奏しやすい形にバランスをとってチューニングをするわけです。

普通、六弦から見てE・A・D・G・B・Eとするレギュラーチューニングにします。
へヴィーメタルなどでより重いイメージを出す為に、各弦の関係性を変えないまま全弦を半音下げた、半音下げチューニングなども良く見かけます。
これ以外にも「各弦の関係性を崩したチューニング」も数多く存在します。
但し、変則チューニングの大前提として、各弦の調律を変えると言う事はすなわち弦のテンションを変更することでもあります。
よって、レギュラーチューニングでフローティング状態にセッティングされたトレモロ有りギターでは、セッティング自体狂ってしまうことになります。
そういった微妙なセッティングを施されたギターは、セッティングをやり直す手間がかかると言う観点から、変則チューニングに向いていないのでご注意を。

こちらはレギュラーチューニングを施した後、六弦のみを1音下げたチューニング、俗に言うドロップチューニングです。
この場合、ドロップされた音がD(六弦、E→D)にあたるので、ドロップDチューニングと呼ばれます。
元々クラシックギターなどで使われていたチューニングですが、迫力のある低音が鳴る事からメタル系のアーティストが利用したり、90年代のグランジ/オルタナティブムーブメントの頃によく利用された事もあって、現在ではエレキギターのチューニング法としてポピュラーなものであると言えます。
レギュラーチューニングから六弦を一音下げるという簡単な変化ですから、ワンタッチで1音下げられる六弦用ペグやフロイトローズトレモロ用のパーツも存在します。

では実際に、このドロップチューニングにする事によってどんな変化が得られるか。
先ず単純に、六弦が一音低くチューニングされているわけですから、レギュラーチューニングでは出せない一音低い音が出せます。
実際に弾いてみると、レギュラーチューニングとは随分と印象の違うワイルドな音がするはずです。
たかが一音、されど一音ですね。
次に挙げられるのは、六弦のみ一音下がる事によって指板上の音程配置にズレが生じる事となります。
たとえば、レギュラーチューニングで六弦・五弦を使い、Gのパワーコードを弾く場合、六弦3フレット五弦5フレットを押さえる必要があるのに対し、ドロップDチューニングでは六弦、五弦とも5フレットを押さえてやれば同様のパワーコードになります。
低音弦でのパワーコードの押さえ方が容易になる事を利用すれば、レギュラーチューニングでは難しい、頻繁なフレット移動を伴うような低音パワーコードリフを簡単に弾けるようになります。
そういった点を利用して、指一本でパワーコードを押さえられるドロップチューニングだからこそ可能な低音リフの創作という事も出来るようになるわけです。
次の図は、レギュラーチューニングをしたギターと仮定したTABです。

ブルースやR&Rで良く見かけるリフパターンです。
途中、六弦3フレット・五弦7フレットとワイドストレッチを強いられる場面があります。
これを、ドロップDチューニングに変えて弾くとどうなるかが次の図です。

同じフレーズでも随分と簡単な運指になります。
次にコードですが、六弦の音程配置がずれてしまうことから、通常の押さえ方のフルコードはおかしなことになってしまいます。
ですが、五弦から一弦まではレギュラーチューニングと変わりはないので、六弦をミュートしてしまえばレギュラーチューニングと同じコードフォームが使えます。
六弦を必ずミュートしなければならないと言うわけでもありません。
レギュラーチューニングのコードフォームをそのまま利用しても、和音構成音を確かめてみるとオンコードになっている場合もあり、時に意外な響きを持った和音として利用できる場合もあります。

六弦開放がDになることから、開放弦を利用したこんなDメジャーコードを弾く事も可能です。
工夫次第でレギュラーチューニングとは違う響きのコードを弾く事が出来るのも、ドロップDチューニングの面白さです。

Gibson / Early 1960s J-45 EB (Ebony) w/Adjustable Bridge

石橋楽器店