カシオ計算機株式会社といえば、腕時計や電子辞書で馴染みのある日本の有名メーカーですが、既存の製品をシェイプアップし、入門用廉価製品を生み出すのが得意なメーカーといった印象もあります。
電子楽器も手がけるCASIO。
電子ピアノや古くは低価格のMIDI音源まで、楽器の分野でもユーザーフレンドリーな製品を製造販売してきたことでも知られます。
同社は、時に時代を先取りした様な商品を市場に投入してくるチャレンジ精神溢れる側面も持っています。
それは、ブラウン管全盛の時代の液晶ポケットテレビであったり、ソーラー電源の超薄型計算機、電話番号記憶機能つきの時計など、枚挙に暇がない程です。
1987年、そんなCASIOが電子楽器の分野に新たなアイディアの製品を投入します。

CASIO デジタルギターDGシリーズです。
今から20年以上前に作られたとは思えないような近未来デザイン。
ロックやボサノバといったリズムパターンを選択可能。任意のテンポを選択出来るリズムマシーン機能搭載。
アコースティックギターやエレクトリックギター等、複数の音色を発音可能。
本体にスピーカー内蔵なので、アンプの必要なし。
MIDI端子やヘッドホン端子など多彩なアウトプット機能を搭載。
と、夢のようなギターに思えます。
が、細かく見ていくと気になる点が色々と目に付きます。
先ず目に付くのが、STEINBERGER製のギターの様なヘッドレスデザイン。チューニングペグも見当たりません。
STEINBERGERの様にブリッジ部分でチューニングするのかと思いきや、そうでもありません。
ヘッド部分で六角レンチを使用して弦の張力を調整する構造です。
六角レンチ?と当然思われるでしょうがそれもそのはず、基本的にチューニングの必要が無いのです。
第一、張られている弦はアコースティックギター用のナイロン弦。
このDGシリーズ、エレキギターのブリッジに相当する部分に弦の振動を感知する物理的なスイッチが搭載されていて、弦が震えているか震えていないかを検知し発音する仕組みです。
つまり、張られているナイロン弦はスイッチの延長であり、ピッキング動作で発音スイッチをONにしているだけなのです。
弦振動そのものの音をピックアップするわけではないので、チューニングの必要が無いのも当然。
では、音程変化はと言うと、エレキギターの指板に相当する部分はラバー製。このフレット部分にタッチセンサーが仕込まれていて、触れたフレットの音程センサーをON/OFFする仕組みです。
極端な話、弦を押弦ミスしたとしても、フレットボードさえ触っていれば音程は変わると言う事です。
多彩な音色が売りのデジタルギターですが、こうした構造からお分かり頂ける様に、発音される音色はMIDI音源のそれです。
デジタル「ギター」と名前は付いていますが、楽器としてはギターではなく、「ギターの形をしたシンセサイザー」という事ですね。
鍵盤ではない「ギターを模した」特殊な発音・演奏方法は非常に扱い辛く、シンセサイザーとして使うにはなかなか厳しいものがあります。
一番の問題はミュートが利かない事。
弦が振動すれば、発音されてしまうので、左手でミュートしていても開放弦の音程が鳴ってしまいます。
これではコードを弾く事がままなりません。
こうした演奏のし難さ等が、いまいち一般化しなかった理由なのだろうと思います。
しかしながら、こうしたCASIOの意欲的なチャレンジは非常に面白く、発売当時、大変興味をそそられた事には間違い無いです。
手軽に手に入れられるハイテクノロジー。
ユーザーにそんな印象を与える夢の楽器デジタルギター。
もうちょっとこう、きちんとギターであったならば、まさかのヒット商品になったのかもしれません。

CASIO / LK-115 光ナビゲーションキーボード

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