伝統あるエレキギターブランドの造り出すギターには、そのブランド「らしさ」を感じる特徴があります。
Gibsonで言うならば、その多くがマホガニーボディとマホガニーネックであり、仕込み角度の付けられたセットネック構造やアングルのついたヘッドなど、ブランド伝統とも言える設計思想が随所に見られます。
しかし、そういった伝統あるブランドが、頑なに自社ブランドデザインや設計思想を貫いているかと言うとそうでもなく、ライバルFenderお得意のボルトオンネック接合のギターをGibson社が作り出してみたり、逆にFender社がギブソン的なイメージのギターを作ってみたりと、○○らしさを超えた製品開発が続けられてきたという側面もあります。
時代の変遷や流行の移り変わりにも影響を受けるギターデザイン。
時には、伝統のブランドから面白い一品が誕生する事もあります。
1991年にGibsonブランドから発表されたギター「M-Ⅲ」。
Gibson USA / M-III Electric Lime
Gibsonと言えば、レスポールモデルに代表される何処かクラシックなデザインのギターという印象をお持ちの方が多いかと思われます。
しかし、この「M-Ⅲ」。一見、このギターがGibsonブランドであるとは到底思えません。
奇抜とも言える派手なカッタウェイのボディデザイン。
H-S-H配列のピックアップとフロイドローズ方式のロックトレモロシステム。レギュラースケール、メイプル指板・・・。
フライングVに代表される、数々の変形ギターを開発してきたGibsonですが、Gibson変形ギターには必ずGibsonらしさを感じる設計思想が見られ、デザインがどれだけ変わろうともGibsonと分かってしまう雰囲気があります。
ところがこの「M-Ⅲ」。まるで他社ブランドのギターかの様です。

Gibson USA / M-III Electric Lime
しかし、ヘッドロゴを見ればこのギターが紛うこと無きGibsonである事が分かります。
1991年当時、市場で人気のブランドであったシャーベルやクレイマーに対抗出来うる商品をと言う事で開発された「M-Ⅲ」。
それまでの伝統を捨て去るかのごとく、当時の流行を取り入れたデザインやロック式トレモロ等の装備を積極的に取り入れ開発されました。
かと言って、何処にもGibsonらしさは無いのかと言うとそうでもありません。

ボディ材はGibsonのお家芸ソリッドマホガニーであり、このタイプには珍しいと言えるセットネック方式のネックジョイント。
現代のレスポールなどにも採用されている、ハイフレットになるほど指板Rが平らになって行く「コンパウンドラディアス加工」。
これだけ尖がった印象のギターを創り出しても、どこかGibsonらしさは残って居ます。
歴史あるブランドGibsonが、当時の市場人気のモデルを見て「うちでもそんなの作れるよ?」と言ったかどうかは分かりませんが、「うちが作ったらこうなるよ?」という「M-Ⅲ」を見せてくれたのは興味深いですね。
伝統メーカーの多芸っぷりを見せ付けられた様な一品に思えます。

Gibson USA / M-III Orange Glow

石橋楽器店
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