久しぶりに私所有のギターのお話です。
エレキギター史に燦然と輝く変形ギターの代名詞、
フライングVが開発されたのは1957年。
天下のGIBSON社から、フューチュラ/エクスプローラー、モダーンと共にこのフライングVは産み出されました。
これは楽器なのか?と一瞬目を疑う程の攻撃的な造形。
大胆なデザインのV型ボディは、初めてこのギターを見る者を圧倒します。

と言っても、私所有のフライングVは、ボルトオンジョイントの模倣品。
安ギター界の星、Photogenic製であります。

何故このフライングVモデルを手に入れたのかと言われれば、価格が安かったから(中古で手に入れました)というのもありますが、状態が良かったのか?音が好みだったのか?と言われるとそうでもなく、完全にV型デザイン、フライングVモデルであったからがその理由です。
フライングVモデルに対して良く言われている事、まずこのボディデザイン。
通常座って弾くような使い方を完全に拒絶するスタイルです。
椅子に座ろうが、胡坐をかこうが、太もも上をズリズリと滑り落ちて行こうとするフライングV。
まず、普通の弾き方は出来ません。
それでも無理に座って弾こうとするならば、極端な前傾姿勢、お辞儀をするような態勢を取りながら、通常とは逆のネックアングルに構えて弾くしかありません。
もしくは、ボディエンドを床に当て、ギター自体をかなり立たせた状態で弾く事となります。
最早、琵琶法師かという状態です。
通常利用するには、非常に扱い辛いデザインと言えるフライングV。
ロックなのだから、ストラップを付けて立って弾け!と命令されてるかの様です。

私がこのモデルを”魔物”と評するのもこのボディデザイン故であります。
ロックスターに憧れ、またそのスターが愛用するフライングVモデルに憧れ、エレキギターを始めたい!なんて言う方がきっと世界中にごまんと居る(居た)事でしょう。
しかし、このフライングVと言うモデル。完全に初心者キラーと言えるモデルです。
夢を抱きエレキギターを手に入れたのは良いが、もしそれが仮にフライングVモデルであったとしたら。
まず、普通に練習なんて出来ません。
初心の方が最初に取り組もうとする、運指やピッキングといった諸動作の練習を激しく阻害します。
それは、初めてギターに取り組む大変さを更に助長する結果となり、ギター練習そのものに大きなストレスを与える事になるでしょう。
私も初めて手にしたギターがフライングVであったならば、もしかして早々にギター演奏なんていうものに挫折していたかもしれません。
魅惑的なルックスでロック少年を惑わし、挫折の道に誘う魔物。それがフライングVという名モデルの隠れた一面なのかもしれません。
初めてギターを手にする方には、決しておすすめ出来ないフライングVモデル。
しかし、どうしてもこのモデルが良いんだ。たとえ難しくともフライングVと共に上達してやるんだ。という方がもしいらっしゃるのならば、そんな情熱を私は否定しはしません。
唯、一言だけ。その道は相当の覚悟を要する茨の道であるという事。それだけは覚悟をして頂きたいです。
そんな魔物、フライングVモデルですが、ある程度ギターが扱える様になってから触れてみると、実に面白いモデルであるとも言えます。
その造形故の弾き難さ、邪魔されている感覚を制御しながら弾くというのが実に面白く感じられるのです。
寝転がった状態でギターを弾くという
怠惰な練習をしたりしている私ですが、そんな状態でも大きく突出したボディ先端はかなり邪魔と感じる事があります。
しかし、そんな邪魔な突起の付いたボディ、フライングVをどうにか取り回してやろうと練習/演奏する行為自体が面白いのです。
琵琶法師と表現しましたが、座って弾く状態でこの特異なボディ形状をどうにか誤魔化しながら練習しようとするのもまた楽しくてしかたありません。
通常のギターと同じように扱うのが困難というフライングVモデルは、違う面白さ(変な意味でかもしれません)を奏者に与えてくれるのです。
少しでも椅子に座った状態で弾きやすくしようと、
スタインバーガーブランドのギターに付いている様なレッグレストをフライングVに増設しているケースやボディ側面に滑り止めシールを張り付けているのを見かけたりもしますが、個人的には座って弾く事を許してくれないギターこそフライングVであると思っているので、そういった改造は施していません。
楽器としての扱いやすさを無視したとも考えられるこのデザイン。
それにもかかわらず、世界中のギタリストやギター愛好家を虜にしてきた名モデルフライングV。
魔性と呼べる何かを持ったエレキギターである事に間違いはありません。

Gibson / 2014 Limited Run Flying V 120

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