ギターを弾く上で知っておくとお得な楽典その30。
今回のテーマは、転調です。
世の中には「無調音楽」等というものも存在しますが、普通音楽は一定の規律を持って作られるのが一般的です。
予め、主調(キー)が設定されていて、それを基準にメロディーや伴奏と言った物が形作られます。
絶対音感を持つ音楽家は、調性毎の僅かな印象の違いを鋭敏に感じ取りキーを設定し、または楽器毎の音域を考慮に入れながら作曲する事になります。
ですが、歌物の場合。ポップスやロックなどの場合には、ボーカリストの音域を考慮して、歌い易いキーに設定するのが一般的であると思います。
しかし、この主調・曲のキーというものは絶対的なものではなく、ある曲では曲の途中で何度も(あるいは頻繁に)変わったりもするものです。
転調と呼ばれるこれら主調の変化。
転調などという言われ方をすると何やら小難しくも聞こえますが、実際には一定の方法・パターンが使われている事が殆どです。
楽曲にインパクトを与えたり、盛り上げたりと作曲者が創意工夫する転調。
部分転調と言われる、聞こえ方の錯覚・予想の錯覚を利用した、セカンダリードミナント等を利用したアレンジも良く見かけますが、これらの場合速やかに元の主調に戻る場合が多いので然程混乱はしないでしょう。
問題は、ある一定の長さ/小節に渡って、完全に別の調へと移行してしまう転調です。
先ず、良くある転調のケースとして挙げられるのが、
平行調への転調です。
ハ長調(Cメジャー)で考えるならば、ハ長調の第六音”A”を主音として考えたイ短調(Aマイナー)が平行調の関係にある調性です。

曲のキーはハ長調(Cメジャー)。最初のコードはトニックコードのCM7です。
ところが次につながるコードはと言うとE7であり、その後Am7へと短調ドミナントモーションを起こしている形になっています。
ハ長調のダイアトニックコードで考えるならば、ハ長調に於いてのドミナントセブンスコードはG7でありますから、本来ならCM7→G7→CM7と進行するはずです。
スケール上に構成されるダイアトニックコードを考えた場合、メジャーコードであろうが、マイナーコードであろうが使える事に違いは無いのですが、”E7”というコードはハ長調ダイアトニックコードに存在しない、ノンダイアトニックコードであります。
しかも、E7から繋がるのはAm7。
Am7は、ハ長調のダイアトニックコードとして存在していますが、E7→Am7繋がる短調ドミナントモーションの流れと考えられるので、この場合、初めのCM7の時点でCメジャーキーであったものが、途中から平行調であるAマイナーキーへと転調したと考えるのが妥当です。
これは極端な例ですが、いくらハ長調(Cメジャーキー)という表記があったとしても、途中からイ短調(Aマイナーキー)に転調していると考えられるケースです。
CM7→E7というコード進行があり得ない訳ではありませんが、もう少し工夫を加えて転調させるケースも良くあります。

E7コードの前に、Bm7(-5)を挟んだ形。
Bm7(-5)と言うコードをダイアトニックコード上で確認してみると、ハ長調(Cメジャー)ではⅦであり、イ短調(Aマイナー)から見るとⅡにあたる
副3和音です。
つまりは、ハ長調から見れば、Bm7(-5)コードはドミナントの代理コード。
イ短調から見れば、Bm7(-5)コードは、サブドミナントの代理コード。更には、Bm7(-5)→E7→Am7の部分を見ると、Ⅱ(m)→Ⅴ→Ⅰ(m)の
ツーファイブ進行との解釈も出来ます。
このように、転調の際に互いの調のダイアトニックコードに存在し、その繋がりを円滑にする役目を担うコードをピポットコードと言います。
平行調の関係にある調同士は、ダイアトニックコード上に構成される和音も同じですので、ピポットコードを見つけやすく利用し易いと言えます。
その為、スムーズな転調も容易であり、楽曲の中で多く使われているパターンだと言えます。
この様に、何処でドミナントセブンスが使われているか、どこでドミナントモーションが起きているのかを見つける事が調性の変化を見極める上でのポイントとなります。
更にそこから、隣接する他のコードを比較し、コード機能を解釈することによって、そのドミナントセブンス部分が転調なのか、セカンダリードミナントなどの部分転調なのか、見極める事が可能になると思います。
次回は、その他の良くある転調パターンに続きます。
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