気になるギタリスト60回目。
今回取り上げるのは、当コーナー始まって以来、最もぶっ飛んでいると考えられるギタリスト。
世界的なパンクムーブメントの先駆けとなったニューヨークパンクが生まれた1970年代。
そんな時代にデビューを飾ったパンク/ノイズバンド「DNA」のギタリスト兼ボーカリスト「アート・リンゼイ」です。

現在、御年62歳。
若き日の彼は、何処か知的な雰囲気を漂わせる姿。
そんな彼の脇を固めるのは、後に脱退する事になるキーボーディストの「ロビン・クラッチフィールド」。
不気味なサウンドを響かせるベーシスト「ティム・ライト」。
そして、ほとんど演奏した事の無い楽器に向かう日本人女性ドラマー「イクエ・モリ」。
・・・彼や「DNA」というバンドを知らない方にしてみれば、この時点で実に不穏な空気を感じられる事でしょう。
知的な雰囲気漂う「アート・リンゼイ」。
彼がひとたびギターを手にすれば、狂った様に絶叫してみたり、そもそも弾けるんだか弾けないんだか分からないエレキギターをかき鳴らすという超絶スタイルを披露してくれます。
前衛的。芸術性溢れるアプローチ。そう言えば聞こえは良いですが、音楽とは斯くあるべき、こういうモノという考えをしっかりもっていれば持っている程、全く理解の出来ない音楽スタイルのギタリストに感じられる事でしょう。

彼らのバンド「DNA」は、「ブライアン・イーノ」プロデュースによる有名なコンピレーションアルバム「No New York」(1978年)に参加。それをきっかけに、時代の先端を行く前衛的なバンドとして注目を集めました。
しかし、限りなくアート寄りな活動、前衛的なパフォーマンスはそれ程長く続かないのが世の常。
カルト的な人気を得た「DNA」は、3枚のアルバム(一枚は言わばベスト盤)を残し1982年に解散。

音楽シーンに強烈なイメージだけを残し消えて行きました。
ロックミュージックに於いて、特にパンクロックなどで聞かれる言葉、「初期衝動」。
出来る出来ないでは無く、内から溢れるモノをそのまま声にしギターにぶつける。
「アート・リンゼイ」が見せた衝撃的な姿は、まさにそれなのではないかと考えさせられます。
「DNA」解散後も多ジャンルに渡り精力的な活動を続けて来た彼。
楽器を手にする以上、上手に美しい音楽を奏でたいと普通考えてしまうものですが、そんなの関係ないと言わんばかりのスタイル。
ふざけている訳でも、手を抜いているわけでもありません。
良い音でなくても構わない、調律だって二の次。とにかく感じたままを表現しようとする彼の姿。
誰にも真似できない、個性溢れる(溢れすぎている)ギタリストなのだと感じます。
ボロボロの「Danelectro」がこれ程似合うギタリストなど、彼以外に居ないと思います。
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