気になるギタリスト86回目。
今回取り上げますギタリストは、ハードロック界の大御所。
「Led Zeppelin」、「Deep Purple」と並んで、ハードロック界の3大バンドの一つ等とも言われる伝説的バンド、「Black Sabbath」のギタリストである「トニー・アイオミ」です。

ハードロック界のクラシックとも呼べるこれらのバンドのギタリストに共通することは、現在のものに比べればシンプルな形で、そして最大限のインパクトを残すギターリフを生み出す事の出来る名手揃いという事です。
トニー・アイオミは、その中でも特にヘヴィーでインパクトあるリフを生み出す才能に長けているギタリストだと言えるでしょう。

1970年のデビュー以来、幾多のメンバー交代を経て現在まで活動を続けて来た「Black Sabbath」でありますが、「トニー・アイオミ」だけはメンバーで唯一、一度もバンドを離れる事無く活動し続けて来たオリジナルメンバーです。
そう言った意味では、彼こそがBlack Sabbathであるとも言えるのかもしれません。
良くも悪くもアクの強いボーカリスト「オジー・オズボーン」の時代から、常に重厚でヘヴィネスなバンドサウンドを生み出し、ギタリストとしてバンドを支え続けて来ました。
問題の多いオジー・オズボーンがバンドを解雇されてからは、当然後に残ったトニー・アイオミが主となりバンドを牽引して行く事となりましたが、非常にキャラクターの強いボーカリストの抜けた影響は大きく、一時期はまったく別の方向性を感じさせるバンドと姿を変えていました。
確かにその間も、重厚さやキャッチーなリフと言ったトニー・アイオミらしさは発揮されていたものの、オジー・オズボーン時代を知るファンからすれば、何処か違和感を感じる時期であったかもしれません。
そうした歴史を踏まえた上でBlack Sabbathは、1997年にオリジナルメンバーを再結集し活動を続けていく事となります。

さて、トニー・アイオミ/Black Sabbathを語る上で欠かせない、重厚なサウンドというのがポイントとなりますが、トニーアイオミにこの重厚なサウンドを生み出す切っ掛けを与えたのは、彼の身に降りかかったある事故が重要なファクターとなっています。
その事故とは、仕事中にプレス機で右手の指を切断するという大事故。
左利きであるトニー・アイオミにとって右手の指は押弦の為に使用される指。
失ったのは指の先端部分だけとは言え、楽器演奏をする身としては致命的と思われました。
それでも音楽の道を目指した彼は、問題克服の為に様々な工夫を施す事となりましたが、その工夫の一つにギター弦のテンションを下げる事などが考えられて行きました。
これは、僅かな力でも確実に押弦可能な様にと工夫されたものですが、結果彼独特のギターサウンド/トーンを生み出す事となりました。
さらに、指の先にチップ(義指)を付けた状態でも的確に演奏出来るパワーコード主体のリフなどが生み出され、これも重厚なサウンドスタイルを生み出す大きな要因となっています。
偶然か必然か、事故により失った自由を克服するために生み出されたサウンドと音楽スタイル。
もちろん、オジー・オズボーンという異才をより引き立たせた楽曲作りによってもヘヴィなサウンド演出はされています。
しかし、それだけではない超ヘヴィなBlack Sabbathの世界は、不幸な事故とそれを克服しようとしたギタリストの情熱、そして、その中から生まれた創意工夫が生み出した奇跡と呼べるものなのかもしれません。
人生の苦難に立ち向かい、偉大な作品を数多く残してきた彼。
しかし、苦難はこれで終わりではありませんでした。

2011年。トニー・アイオミの身を悪性リンパ腫が襲います。
ガン治療を行いながら2013年に発表されたアルバム「13」は、彼らしい・Black Sabbathらしい魅力に溢れた作品でした。
病をおしての作品発表。
当然、彼は本当に大丈夫なのか?と心配されていたものでしたが・・・
そして、2016年。
Black Sabbathは”最後”となるツアーを行うと共に解散を発表。
2017年、ラストライブを行い約50年に及ぶバンドの歴史は幕を下ろしました。

幸いなことに、現在は治療も上手く行き症状が治まっている状態だと報じられています。
ですが、ガンはいつ再発するかも分からない。
日々そんな思いと戦いながらもステージに立ち続けた偉大なギタリスト。
いつの日か完全に病を克服し、再びファンの前に立ってくれる事を願わずにはいられません。
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