ギターを弾く上で知っておくとお得な楽典その99。
今回は”強い和音”というテーマです。

上記図は皆さまお馴染みのパワーコード(5度コード)。
今やロックギターをやる上で欠かせないと言って良いほど頻出する、ルート音に5度音を加えた形の和音です。
以前、”
空虚5度”を取り上げた際に書きましたが、原初の和音と呼べる存在ではあるものの、その後発明された3和音主体の考え方においては和音というには未完成な形。
時代によっては逆に使うべきではないものとさえされていました。

同様にクラシックの世界では有名な平行5度という考え方があります。
これは、ある声部と声部が連続して5度関係に移行するような変化をするべきではない。
”禁則”として扱われている音程変化であります。
図の上が平行5度。下の図の様な変化ならば問題ないという考え方です。
しかし、これをロックバンドの演奏に置き換えて考えてみましょう。
例えば上の声部がギター単音。
下の声部がベースギターだとします。
こうして考えた場合、この平行5度という禁則は守るべきものなのでしょうか?
むしろ、ロックバンドの伴奏においてギターとベースが平行5度になるパターンは相当出てくると思われる程です。
では、何故クラシックの世界では平行5度は禁則とされている(いた)のか。
ロックやポピュラーなど、”メロディ+伴奏”という形態とは異なる和声という考え方においては、”各声部の独立”という要素が重要です。
全ての声部が各々躍動的に動くことにより、よりすばらしい音楽的な表現が可能であるという考え方です。
その中で、空虚5度や平行5度は、声部事の独立性を失うものだと考えられて来ました。
5度という完全音程が連続してしまうと、声部同士の音が融合し過ぎてしまう。
つまりこれを言い換えれば、”融合しすぎる”=”強い音程関係(和音)”という意味でもあります。
そう考えると、サウンドに力強さを求められる事も多いロックの中でなぜパワーコードが多用されるのか。
その一つの答えにもなっているのではないかと思います。
ちなみに、平行5度が禁則とされているクラシック界でも、モーツァルトなど有名な作曲家がこの平行5度を使用していたりもします。
無論、天才作曲家たちが、ミスや見落としをしていたとは考えにくいです。
禁則と分かっていながらも、そこに力強い和音が必要だった。
そう考えたに違いありません。
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