知っていると、少しだけためになるかもしれない小技。
前回は、右手ピッキング動作の到達点(演奏する上で要求される右手の動き)というお話でしたが、ではもう少し具体的にどんな動きを習得しなければならないか。またその為にどんな練習をすると良いか?というお題で行ってみたいと思います。

良く”ピッキングは奥が深い”などと言われますが、それもその筈。
プロミュージシャンの方々を見回しても、一見同じようなピッキングに見えても細かく観察すれば千差万別。
もともと、身体的に個人差のある人間が行う運動行為ですので、その人それぞれのスタイルがあって然るべきものであります。
従って、これが正解と思われる何方かの真似をしようにも上手く行かない(単純に自分には合わない)等というケースも出てくるのではないかと思われますので、すなわちこれが奥深さの一因であるとも考えられる訳です。
しかしながら初中級者の段階であると、こうしたピッキングスタイルや技術的な問題よりも基本的なピックの振り方ですとか、それに伴う肉体的問題の方の不足が大きく、実はテクニック以前の問題であったりする場合が多くみられるのだと思います。
むしろそれが殆どの初中級者に起こっている状態だと言えるのかもしれません。
これは、右手のアプローチ(手や手首の角度等々)やピックを当てる角度などの上級者とは明らかに違う見た目にばかり注目するがあまり、基本的な右手動作とそれに必要な筋力、その鍛錬を軽視してしまっている結果なのだと思います。
そもそも、今すぐ上級者と全く同じ感覚を手に入れたとしても、それを己の訓練不足の体では体現出来ないというのは誰しも想像つく事であると思います。

さて、ならばどの様に必要なピッキングに必要な力、”基礎力”を付けていくのかと言う話になりますが、乱暴な言い方をしてしまえば、自分に合った合理的なピッキング動作をとにかく反復するという話に帰結するかと思います。
単純にギターを弾き続けていれば、(合理的なピッキングかは別として)ピックを振る動作の為の力は自然と養われて行きます。
これは上記の様な小難しい事は全く考えない、ただ好きでギターを弾き続けてきたという方が実は立派な腕前を持っていたりするというのがそれほど珍しい事でもないのが答えでもあります。
とにかくコピーをしろという練習を進める方の意義も、別の意味で考えればとにかくギターに向かえと言っているのと同じであるとも取れる訳です。
しかし、これぞ正解というものが見えない状態でただ修練を積めと言われてもそれはそれは不安なものだと思います。
右手を如何に使うか?どんなアプローチをすべきか?そう悩む事自体が上達への道だとも言える訳ですが、悩んでいるだけでは上達はおぼつきません。
そんな不安と戦いながらではどうしても練習出来ないという方は、やはり実力ある身近な上級者やプロギター講師の方にアドバイスを頂くのが正解なのだと思います。
それでも、自分で少しずつ上達して行きたいと考える方であれば、上級者の方の演奏を観察し、自分に投影しつつ、基礎的な動作トレーニングを続けて行くしか道はありません。
ではそうした場合、基礎的な動作トレーニングをどう進めて行けば良いのかという話になりますが、個人的にはやはりスケール練習などの基礎トレーニングが何よりであると思っています。

通常、スケール練習は左手運指動作の為と思われがちなのかもしれませんが、ピッキングを伴う以上右手動作の練習にもなる訳です。
特に高音弦の反復などは右手動作の正確性が求められますので、ピッキング動作の不備、不得手が把握しやすいかと思います。
低音弦のピッキングでも同じ動作でありますが、ピックを当てる対象が大きい(弦が太い)低音弦部では上手くピッキング出来ていなくてもそれなりに鳴らせている様な気がしてしまいます。
歪ませてしまえば尚の事。
それでも上級者の方になれば、低音弦が上手く弾けていないなどの差に気づくものだと思われますが、初中級者の方ではそれなりに上手く弾けていると勘違いしてしまう事も多くなると思われますので、やはり高音源をしっかり弾き音を出す反復練習というのが良い練習になるかと思われます。
特に初心者の方であれば、この単純なピッキングと弦移動で既に音を上げてしまうかもしれません。
しかし、まずは運動動作の練習をしているのだと考えれば、上手く音が出なくとも根気強く挑めるかと思います。
確かに上手く音が出ないとあまり面白くはないと感じてしまうかもしれませんが、そこは我慢です。

そして、こうした高音弦の反復を幾日も続けて行くと、やがて力が入りすぎていた右手の痛みが薄らいで行き、さらにピックをしっかり制御出来ている感覚や弾く対象の弦の付近で右手を保持出来る様な感覚が身について行くと思います。
”右手を保持出来る様な感覚”と言いましたが、該当する極小さな場所に右手/ピックをキープ出来る、抑えが効くという様な感覚かもしれません。
ピッキング動作をする度に右手位置がフラフラと定まらなければ毎度同じように弦を弾く事など出来ないというのはお分かりでしょう。
上級者の方になれば、より厳密な右手保持が可能になっている筈です。
これも、反復練習による肉体鍛錬あって初めて可能な事であります。
音楽=芸術という事で感覚というものも勿論大切だとは思いますが、こと楽器を扱うという点に関して言えば肉体的なトレーニングが必須です。
楽器を扱うという部分でも感覚の話は必要ですが、それでも身体能力が伴わなければその感覚を活かす事も出来ません。
恐らく、どんなに優れた感覚の持ち主であっても、努力(その量に差は生まれど)なしに上達した方は居ないのではないかと考えます。
地道な基礎トレーニングは必ずや演奏に跳ね返ってくるものだと思いますし、私が年々感じつづけている事でもあります。
年を重ねた私でも反復トレーニングの効果は感じられるものですので、若い方ならばもっと大きな成果を得られるものだと思います。

EVH / 5150 III 15W LBXII Head

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