ギターを弾く上で知っておくとお得な楽典その10。
ここまで、
ダイアトニックコードや
その性質について見てきました。
ここで、一つの疑問が生じるのではないかと思います。
調性が決まり、自然とダイアトニックコードが形成されるのならば、曲中それ以外のコードは使えないのか?と言う疑問です。
しかし、そんな事はありません。
メロディーに対し不協和にならなければ、基本的に何のコードを使ってもOKなのです。
但し、コード進行というものにも流れが必要であり、あまりに急激な音程変化や繋がりの悪いコード進行は避けられるのが普通です。
ですが、メロディとの間に不協和が生まれず、コードの性質を考え、流れを乱すさず繋がりが良いのならば、ダイアトニック以外のコードも使えるわけです。
具体例を挙げると、裏コードという概念があります。
ハ長調で言うならば、
ドミナントモーションを起こす重要なコード、ドミナントセブンスはG7になるわけですが、この代理として働く裏コードはC♯7(D♭7)です。
普通に考えれば、C♯(D♭)というハ長調の音階に無い音がルートであるこのコードが上手くはまるとも思い難いと感じます。
この場合の裏コードC♯7が、何故G7の代理として働くのか?
ドミナントモーションを起こすのに重要な役割を持っているのが、ドミナントセブンス和音内に含まれる三全音(トライトーン)であるというのは、ドミナントの解決の記事で書いた通りです。
ハ長調の場合のドミナントセブンスはG7。
同じハ長調のダイアトニックコード内で、同様のトライトーンを持つコードがBm-5であり、代理として使える場合もあるとご紹介しました。

上記図は、分かりやすくそのトライトーン関係の二音(BとF)を赤くマーキングした譜面です。
ここで裏コードC♯7の構成音を考えてみると、ルート・C♯、3rd・F、5th・G♯、7th・Bと言う和音だという事が分かります。
こうして見ると、C♯7は和音内にBとF音を含んだ和音であり、転回させればトライトーンを含む和音であるという事です。
スケール上に無い音がルートであるC♯7がG7の代理として使える理由がなんとなくお分かり頂けたでしょうか?
次にこの裏コード、突飛にC♯というルート音が出てきた訳ではありません。
簡単に対象の裏コードを導き出せる方法があります。
それは、対象とするコードのルート音とその裏コードのルート音とが増4度関係だという事です。
G7のルート音であるGから増4度上の音程はC♯ですね。
よってG7の裏コードはC♯7になるという事です。
楽典などでよく見かける、五度圏(サークルオブフィフス)という表があります。

上記図は、その五度圏表を簡略化したものですが、外側が長調、内側が短調を表しています。
てっぺんのCから右周りは完全五度上の音程を表し、逆に左回りは完全四度上の音程関係になっています。
調号の早見表としても利用される五度圏ですが、この対角の関係(Cなら反対はF♯)が丁度増4度関係になっています。
先ほどの裏コードの関係、G7に対するC♯7(=ルートが増4度関係)を確認してみて頂けると分かりやすいと思います。
五度圏表は、裏コードを簡単に見つけるのにも役立ちますね。
裏コードはドミナントセブンス以外(V7以外/副属7のドミナント)にも利用されます。
ルート音が増4度関係にあるという事を覚えておけば、簡単に対象の裏コードを見つける事が出来ると思います。
ロックに関して言えば、厳密にドミナントセブンスに拘っているわけでもなく、自由な発想でコード進行を行っているケースも見かけます。
時にずっこけた様なコード進行でも、強いインパクトを与える結果を生み出したりもしますが、実はそのスケール外のパワーコードが裏コードの省略系になっているなんて場合もあります。
裏コードに限らずとも、メロディーとの関係が不協和にならず、印象的な効果を生み出せるのならば、こうしたスケール/ダイアトニックコード外のコードも使えるというわけです。
ダイアトニックコードから外れるコードは、上手く使えば曲に程よいインパクトを与え面白い効果を得る事が出来ます。
しかし、あまりにダイアトニックコードを無視したコード進行は、曲の調性を見失う結果を招いてしまいます。
アバンギャルドな路線を行くならまだしも、あまりに多用は禁物という事でもあります。
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