気になるギタリスト26回目は、現在では数少ない王道とも言えるハードロックサウンドに日本的な独特の歌詞、世界感をミックスし独自の世界感を作り上げて来たバンド「人間椅子」のギタリスト、和嶋慎治さんです。

1980年代に興った第二次バンドブーム。
その流れの中で1980年代の終わりに「イカ天」ブームが到来します。
TV番組「三宅裕司のいかすバンド天国」からは数多くのメジャーデビューバンドが排出され、人間椅子もそこから注目を集め、後にメジャーデビューしたバンドの一つでした。
番組に登場した彼ら。先ず目を惹いたのは、同バンドのベーシスト鈴木研一氏のねずみ男の様な風体・・・。
本人曰く、ねずみ男を意識したものでは無かったそうですが、誰の目にもねずみ男としか映らなかった其の姿から、一瞬でイロモノバンドとして認識されてしまった事でしょう。
しかし、その演奏たるや、70年代を思わせる王道ハードロックサウンドを彷彿とさせ、そこに組み合わされた鈴木氏のどこか訛りのある歌唱や歌詞、高度な演奏技術を見せつけ、番組の審査員達を驚かせる事となります。
番組出演で一躍注目を集めた人間椅子は、番組のイカ天レーベルよりアルバムを発表。
続いて1990年、アルバム「人間失格」で正式にメジャーデビューを果たします。

イカ天レーベルより発表されたアルバムの時点で既に完成されていた人間椅子のサウンドは、メジャーデビューで更に洗練され、これが1990年発表の作品とは思えない程、ハードロックの香り漂うアルバムに仕上がっています。
ブラック・サバスなどの往年のハードロックに影響を受けたと思われる和嶋氏のサウンドは、この時点で既に円熟した雰囲気を感じさせるものがあり、氏の演奏技量の高さ、ハードロック愛、造詣の深さを感じ取る事が出来ます。
そんなハードロックサウンドと共にあげられる人間椅子の特徴として、ハードロックと日本文化の融合という点が挙げられます。
ギターの和嶋氏、ベースの鈴木氏共にメインボーカルを取る事があり、それぞれが特徴的な日本文化的なアプローチをしている点です。
青森県出身の御両名、特にベースの鈴木氏は津軽弁を取り入れた歌詞・歌唱が特徴的で、ハードロックと津軽弁というミスマッチが人間椅子と言うバンドを輝かせている一つの要因だと思います。
対して、ギターの和嶋氏は、純文学的な世界感の歌詞が特徴的で、江戸川乱歩や横溝正史、太宰治や芥川龍之介といった日本の文学作品に色濃く影響を受けた歌詞で日本文化を感じさせる楽曲を造り出します。
和風、日本文化とロックの融合というコンセプトを持ったバンドは数多く存在したと思われますが、人間椅子程の成果を出したバンドを探すのは難しいと言わざるを得ません。
人間椅子の根底にあるハードロックの魂とメンバーの深い日本文化に対する造詣が、他に類を見ない世界感を持ったバンドとして成功した一つのポイントであると感じます。
和嶋氏が専らメインギターとして愛用しているのはGibsonやGrecoのSG。
和装に身を包んだ和嶋氏とSGの相性は不思議な程のマッチングを見せ、今や同バンドの大きな特徴の一つですね。
ドラマーの交代を重ねながらも、現在まで精力的なライブ活動を続ける人間椅子。

2013年にもニューアルバムを発表し、勢いが衰えるどころか、ますますハードロックサウンドに磨きをかけている和嶋氏のギタープレイには惚れ惚れするばかりです。
今では聞き慣れない文学的表現で紡ぎ出される和嶋氏の歌詞。
その意味や奥に秘められた意図を紐解いて行こうとすれば、より人間椅子の世界感が楽しめること請け合いです。

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