ギターを弾く上で知っておくとお得な楽典その75。
今回はコードやアンサンブルの中での”音の重複”についてです。
”音の重複”というのはそのままの意味。ある一点において”同じ音名の音が鳴っている”状態。の事ですが、ご存知のようにギターコード一つであっても起きうる(起きている)状態の事でありますから、コードだけでなくアンサンブル全体として見ても音楽の中では当たり前のように発生している現象であります。
基礎的な6弦をフルに使ったメジャーコードの形でも、ルートと5度音程が複数同時になっている事が分かります。
上記の様なCメジャーコードであれば、(オクターブの差こそあれ)C音とE音が複数同時に鳴っている状態です。
複数の同じ音程の音が重なれば、自然とその音程の存在感は増すというのはなんとなくお分かり頂けるかと思います。
すなわち、コードの響きに影響するというのも理解出来るところです。
しかしそう考えると、このコードフォームでは和音の性格を決定づける3度音(E)が一音しか鳴っていません。
単純にこれは(和音としての)バランスが悪いのではないか?と感じます。
ギターの様な弦楽器は左手4本の指で押弦するのが基本である以上仕方がない?
押弦しやすい形を模索していった結果、3度音が一つのこの形になった?
そんな風に考えるのが自然な様な気もしますが、実はこれら音の重複や3度音が一つしかない事にも意味があるのです。
ルート音はコードネームになっている音程ですので、重複することにより存在感を出すというのは理に適っていると感じられます。
(しかし、場合によってはルート音程自体省略される事もあります)
5度音程に関しましては良く省略されている場合もある事から、コード(もしくはアンサンブル)の中で左程重要ではない音程というのが分かります。
(もちろん、音の厚みや響きという事を考慮して、省略すべきでないと判断する場合もあります)
従って、重複してもしなくても良い音程です。
6度や7度、テンションなどが和音に含まれる場合には、それ自体がなければネーム通りの和音が成立しませんので、省略出来ないというのはお分かり頂けるでしょう。
では、問題の3度音程はというと、和音の性格を決定づける音程。
従って本来省略は許されません。
エレキギターがパワーコード(5度コード)を演奏している場面でも、基本的にはアンサンブルのどこかで3度音(もしくは4度)が鳴らされているはずなのです。
(メロディーとの兼ね合いでメジャー感/マイナー感を出しているという表現方法も考えられますが、基本省略不可です)
それほど重要な音程であれば、重複して存在感を出すべきではないのか?と考えるところですが、これが逆に重複されない方が望ましいとされているのです。
何故ならそれは、個々の音程が持つ倍音の関係で、3度音程の主張が強すぎるとコード(/アンサンブル全体)の響きを悪くすると言われているからです。

先ほどのフルコードの例を見ましても、無理をすればこうしたコードフォームのCメジャーも可能ではあります。(五度音程を省略した形/C omit5)
しかし、3度音を重複させるのはよろしくないと考えれば、こうしたコードが使われない理由にも納得が行きます。(そもそも上記の形は大変押弦し辛いですが)
5度音程が省略されていますので単純にフルコードと比較し辛いですが、5度音程が無くなった部分の音程の開きを見ても良い響きはしないというのが五線譜を見て分かります。
さらに、3度音の重複となれば猶更です。
今回は、ギターコードの場合を見て来ましたが、3度の重複はアンサンブル全体としても避けるべき事項です。
しかし、コードの響きやアンサンブル全体/楽曲の聞こえ方などというものは、楽器構成やそのバランスなどによっても幾らでも違って聞こえますので絶対に止めた方が良いという訳ではないと思います。
ですが、どうしても響きが良く感じられない場合には”3度の重複”という概念に注目してみると良い結果を生み出す場合もあると思います。
ギターコードを自分で工夫しようとする際にも重要な事柄です。
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