ギターを弾く上で知っておくとお得な楽典その110。
今回は、上行と下行で音程の変わるスケールです。

上行と下行で音程が変わるスケールと言うと、
旋律短音階(メロディックマイナー)が思い浮かぶかと思います。
和声上必要な導音を求めて第七音を半音上げた和声短音階(ハーモニックマイナー)に対し、それでは第六音との間に音程差が開きすぎてしまうという事で、第六音も半音上げたのが旋律単音階でありますが、下行する際には自然短音階(ナチュラルマイナー)に戻るという少し変わった音階です。
しかしこれは、和声中心のクラシックにおける考え方でありまして、メロディと伴奏という形のロックやポピュラー音楽においてはほぼ使われません。
下行する際にも第六、第七音を半音上げたまま。(こうすると旋律の途中に少しメジャー感が出てしまいます)
クラシックの考え方を取り入れた上で伴奏を作る事は可能ですが、上行と下行でダイアトニックコードが変化してしまうのは少々不都合があるという事です。
さて、少々特殊と思えるこうした上行と下行で音程が変わるスケールなのですが、実は我が国古来の五音音階にも存在しています。

「陽旋法」・「陰旋法」(いわばメジャーとマイナー)と呼ばれているこれらは、上行と下行で音程の変化するスケールです。
(音程差が分かりやすい様にA音を基準に図表しています)
こちらの陰旋法では、上行する際には、”A、B♭、D、E、G、A”という音階ですが、下行する際には”A、F、E、D、B♭、A”という音階に変わります。
上行と下行では、G→Fへと全音分の変化を伴う音階であります。
実際に弾いてみて頂くと、この全音分の違いが面白い差となって現れるのが良くお分かり頂ける事でしょう。
しかしながら、上行の音階を維持し、そのまま下行もする音階もあります。
その場合、「都節」と呼ばれる音階になります。
日本の古典音楽でも、クラシックと同じように和声的な考え方で音楽を作っていたのかもしれませんが、それだけにこうした音階の中の一音の違いに拘るスケールが産み出されたのでしょう。
歴史に残っていない、素晴らしい音楽家が古くから日本にも沢山居たのだろうと想像すると、こうした少し変わった音階の持つ、味わい深さが感じられる様に思えます。
- 関連記事
-
スポンサーサイト