ギターブランドの歴史を顧みてみると、国内有名楽器店、黒澤楽器が展開する「JAXON(ジャクソン)」なんていうブランドもありましたが、世界的に有名なギターブランドと言うとやはりアメリカのギタークラフトマン、グローヴァー・ジャクソンの設立したJackson Guitars/Jacksonブランドが有名であります。
1970年代後半。小さなギターリペア工房からスタートしたJacksonブランドは、Fender社やGibson社に比べれば新しいギターブランドではありますが、1980年代を皮切りに世界を席巻するほどの人気を博した有名ギターブランドとして知られております。
1978年、Charvelのクラフトマンであったグローヴァー・ジャクソンは、ブランド創始者ウェイン・シャーベルより同社を買い受け、ギターリペア工房をスタートさせます。
時はLAメタル全盛期。
ある一人の有名ギタリストがそのギター制作の腕を見込んで、グローヴァー・ジャクソンの元を訪れます。
彼こそ、後にロック史に名を残す事になる天才ギタリスト、ランディ・ローズでした。

ランディー・ローズの提案した新しいスタイルのギターの在り方。
それは、グローバー・ジャクソンの手によって、新デザインのエレキギターとして昇華し産み出される事となりました。
斬新なデザイン。現代のエレキギターへと繋がるコンパウンド・ラディアス指板。
ネックアングルを得る為のスカーフジョイント。
後に、Jacksonヘッドとも呼ばれるコンコルドヘッド。
特別にデザインされたそのギターには、Charvelブランドでは無く「Jackson」と記名されリリースされました。
Jacksonブランドの誕生です。
以降、スルーネック構造やコンコルドヘッド等、新しく先進的な構造のモデルには「Jackson」の名が付けられ、伝統的なデタッチャブルタイプ、ボルトオンネック構造のストラトキャスター派生モデルには「Charvel」の名が付けられ世に送り出されていく事となります。
ここで注目すべきは、Jacksonブランド製品に比べ、Charvelブランド製品が廉価モデルであったかと言うとそうではなく、あくまで棲み分けであったという事です。
こうして世界的人気と知名度を獲得していく事になるJacksonブランド。
我が国では、1980年代に共和商会がJackson輸入代理店を務め、輸入品であるJacksonギターを取扱い始めると同時に廉価製品として国産Charvelブランド製品を発売。
Jackson/Charvel製品共に絶大な人気を誇るブランドとなって行きました。
90年代に入ると、共和商会により国産Jackson製品も販売される様になり、本来は上位下位と言う棲み分けでなかったはずのJackson/Charvelブランドの在り方がより曖昧な物になって行きます。
その後、中信楽器販売製造に移り変わって行ったJacksonブランド。
前述の黒澤楽器店のブランド「JAXON(ジャクソン)」の方が先に国内商標登録をしていたという関係で、Jacksonの商標が利用出来なくなり、「Grover Jackson」や「Jackson Stars」のブランド名で存続していく事となります。
2000年代には、Jackson Starsブランドの取り扱いが山野楽器へと移行し、またJAXON商標が無効との審判が下った事もあり、再びJacksonブランドの復活という混迷を続ける事となります。
そんな迷走を続けている間に、当初グローヴァー・ジャクソンが目指していたギターの在り方・ブランドの棲み分けは混乱をきたして行き、それに呼応するかのようにJackson人気は低迷期を迎えます。
そして何時しか、Jackson/Charvelブランド共に、大手Fender傘下へと組み込まれる事となってしまいました。
そんな中、当のグローヴァー・ジャクソンはと言うと、そんなJacksonブランドの有様に心を痛めたのでしょうか?ブランドを離れてしまいました。
もちろん、現在のJacksonブランド製品にも、グローヴァー・ジャクソンの提唱した現代におけるモダンスペックとも言うべき薄型ネックやフラットな指板といった製品思想は受け継がれていると言えます。
しかし、自身の名がブランドネームでありながら、グローヴァー・ジャクソンの手を離れてしまったJackson。
では、名工グローヴァー・ジャクソンは今何処で何を?
時代の寵児となり世界を席巻したクラフトマンは、もう一度スタート地点に立ち戻り、アメリカ・カリフォルニア州の自社工房で新たな理想のギターを制作し続けております。
それが、GJ2というブランドです。

グローヴァー・ジャクソンの経験と拘りの詰まったGJ2製品。
極少数生産されるそれは、まさに正統Jacksonと言える一本です。

ハイフレットに行くにつれ、指板Rが段階的に変化していくコンパウンド・ラディアス加工の施された指板。
薄く成形されたネックシェイプ。サテン・ウレタンのネック処理。
グローヴァー・ジャクソン自身がギタリストでもあるからこその、奏者が感じるフィーリングを第一に考えた造りの数々。
豪華な見た目では無く、機能性を重視したトータルデザイン。
プレイヤーの為に作られた物だと感じさせてくれるギターであります。
ちなみに、Jacksonブランドの代表モデルとも言えるフライングVの改良版(俗に言うランディV)に似たモデルもGJ2ブランドで作り続けられています。
幾多の苦難を乗り越え、現代に生き続けるグローヴァー・ジャクソンとGJ2 Guitars。
長年、グローヴァー・ジャクソンが思い描いてきたエレキギター理想の姿。
それが今、GJ2 Guitarsここにあるのかもしれません。

GJ2 / Glendora Green Meanie Limited 

石橋楽器店
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